【足フェス登壇報告】足からはじまる健康管理〜セルフケアと医療のバランス〜
2024年6月7日、一宮市のiビルにて開催された「足フェス」に登壇させていただきました。今回は「これからの人生を自分らしく生きていくために 医療とつなげる予防ケア」をテーマに、皮膚科医の先生、フットケア専門看護師、薬剤師の方々と一緒にスペシャル対談という形でお話しさせていただきました。
私は循環器内科・総合内科を専門とし、一宮市木曽川町で墨医院を開業しています。クリニックでは内科・循環器・リハビリテーション科を標榜し、地域の皆さまの健康寿命を延ばすお手伝いを日々行っています。そんな中で、足に現れる異変が、実は全身の病気のサインであることに気づく機会が増えたこともあり、フットケア外来を始めることになりました。
■ なぜ「足」に注目するのか
足が悪くなると、当然ながら歩行が難しくなり、外出機会が減り、社会とのつながりも希薄になります。さらに、足の疾患がある人の多くは、糖尿病や動脈硬化、心不全といった全身疾患を抱えていることがあり、ちょっとした傷が潰瘍となり、最悪の場合は切断に至るケースもあります。
また逆に、足の変化から生活習慣病や血管疾患が見つかるケースも少なくありません。ですから私は、**「足を診ることは、全身を診ることにつながる」**と考えています。
総合内科専門医として足の病気の背景にある内科的因子の特定と管理。さらに循環器内科専門医として血流状態の管理(循環)、また足の治療の基本的な柱の一つである運動療法(リハビリテーション)も当院では実施可能です。そうしたことから当院がフットケア外来を実施するのは当然の役割であると感じるようになりました。
■ 足フェスで感じた「スタンスの違い」
今回の対談では、皮膚科医の先生から「まずはセルフケアをしっかりしましょう」というお話がありました。病院勤務の先生ならではの視点で、病院に来るほどではない段階でも、ご自身で足を観察し、日々のケアを大切にしてほしいという立場です。
その考えには私も大いに賛成です。ですが、開業医として地域に密着し、初期対応や予防に関わる立場としては、**「少しでも違和感があれば遠慮せず受診してほしい」**というスタンスでお話ししました。
足のむくみ、色の変化、冷感、小さな傷やタコ――これらは一見すると「よくあること」のように思われがちですが、その背後に糖尿病、高血圧、心不全、末梢動脈疾患(PAD)などの重大な病気が隠れていることがあります。
■ 足フェスで伝えたこと
今回の対談では、以下のようなメッセージを市民の皆さんにお伝えしました。
- **足に違和感があれば、ぜひ受診してください。**早期に発見し、適切に対応すれば、重症化を防ぐことができます。
- **今、足のことで通院中の方は「生活習慣病の管理は大丈夫ですか?」と担当医に確認してみてください。**足の病気と基礎疾患は密接に関わっています。
- 病院に行く前にセルフケアをすることも大切ですが、「これはいつもと違うかも」と思ったら、迷わず相談できる場所を持っていてください。
■ 墨医院のフットケア外来の取り組み
当院では、フットケア外来で以下のような取り組みを行っています:
- 糖尿病や高血圧、脂質異常症など生活習慣病のコントロールの確認
- 足の血流チェック(ABI検査や下肢エコー)
- 場合によっては心音検査や心エコーによる循環機能評価
- 看護師との連携によるフットケア技術(爪・胼胝ケア、保湿指導)(月に1日フットケア専門ナースがフットケア外来を実施しています)
- 理学療法士による歩行・運動アドバイス
これらの多職種連携によるアプローチを通じて、**「足から始まる予防医療」**を地域に広げたいと考えています。
■ 足を“診る”ことの文化を地域に根付かせたい
足は「沈黙の臓器」と言われることがあります。痛みを感じにくく、小さな傷が大事になりやすい場所です。だからこそ、足を診ることが当たり前になる地域文化をつくることが、健康寿命の延伸に直結すると私は信じています。
これからも、医師としての視点から、そしてクリニックという身近な場所だからこそできる早期発見・予防医療に取り組みながら、地域の皆さまの「足から始まる元気な暮らし」を支えていきたいと思います。
以上、足フェス登壇のご報告でした。
足について気になることがある方は、どうか一人で悩まず、ぜひお気軽にご相談ください。